読み散らかし10月

前回の「読み散らかし」の最後で言及したバーナード・コーンウェルのサクソンシリーズ最新作 "The Pagan Lord"は、予告どおりイギリスのアマゾンから購入してあっという間に読み終わりました。一年ほども待った恋人との逢瀬も、たったの二晩床を共にするのみ。ああ。次の出版までまた2年かな。シリーズの最初では子供だった愛するUhtredは、ついに今回で私の年を越えました。多分次がシリーズ最後です。

Umberto Eco "The Name of the Rose"については、色々思うところあるのでいずれ改めて書きます。読み終えたあとで映画版を観た。ブラザー・ウイリアムの魅力について友達に語っていたら、「映画では誰が?」「ショーン・コネリー。」「それはずるいぞ。」ははは、それもそうだ。

一方で前回までの「読み散らかし」にいつまでもあるJ.R.R.Tolkienの "The Fall of Arthur"と"The Lord of the Rings"はまだ進行中のリストに。
え?まだ?
ええ、まだ。

さて、追加分。
Leonie Frieda "Catherine de Medici: Renaissance Queen of France"
「中世の歴史好きだったら、これ好きだと思うわよ、ちょっとドライだけど。」と友達がずいぶん前に貸してくれたもので、ほったらかしだったすいませんすいませんすいません。それきり会っていないので返す機会もなかったのだ。読み終えたらハイキングにでも誘おう。

A.C. Clarke "The Hammer of God"

これ(←リンク)ですね。大昔クラークばかりむさぼり読んだころに読んでいるのだが、少し前に友達とSFの話になってまたクラークが読みたくなったのだった。はじめの方に、中央コンピューターが「必然的に」デービッドと名づけられている、というところがあって吹き出した。

Gabriel García Márquez "One Hundred Years of Solitude"

日本語版の紹介はこちら(←リンク)。
クラークの本と共に昨日配達されたのだが、箱を開けて手にとったら、嬉しいサプライズだった。
テクスチャーがとても好き。水彩画につかうものみたいなでこぼこした厚手の紙に、タイトルが圧されている。表紙の下のほうの鮮やかな絵もいい。アメリカの本にはよくある側面のカットが不ぞろいな装丁もいい。(日本の本だと、不ぞろいがある場合は上側なんですよね。)しばらく変態みたいに本を撫で回してため息をついてしまった。写真だと伝わりにくいと思うのだけれど、こちら。
側面
paper texture
表紙
front.jpg

本は、一番大事なのはもちろん文章だけれども、それだけではない、姿、手触り、全体あっての本なのだ。
なので、キンドルは便利ではあるけれども不完全なのです。私にとっては。



ファイヤー・マーク・ハンティング(パート2)

(パート1はこちら

わかってますわかってます、まだファイヤーマークの写真がひとつも出てきてません。笑
パート1はフィラデルフィアの観光案内でした。(えらい偏ったやつ。)

さて、化学博物館を出て、まだビールの回ったぼんやりした頭でいよいよファイヤーマークを探します。
確実にあるとわかっている建物がひとつだけあるのだが、その建物がどこだったのかがあやふやだ。
カーペンターズホール
ここに、これから探すべき主なファイヤー・マークが二種類展示してあるのだ。(画像クリックして全体を見てください。)
twosigns.jpg

左の4つの手のマークはThe Philadelphia Contributionshipという会社のもので、通称「ザ・ハンド・イン・ハンド」とよばれている。1752年に、ロンドンの保険会社をモデルにベン・フランクリンが消防士らと設立した、アメリカ合衆国最古の成功した保険会社だ。(参考資料
右の木のマークは、1784年設立のThe Mutual Assurance Companyのもの。こちらにも通称があって、「ザ・グリーン・ツリー」と呼ばれる。この会社は、The Philadelphia Contributionshipが「傍に木がある建物には保険を出さない」という決定をしたことを受けて設立された。この会社は、木が傍にある建物にも保険を提供した。
なぜ木にダメがでたかというと、当時の消火ホースは曲がらない金属のパイプだったため、木に囲まれた建物の消火は難しかったから、ということのようです。燃えるから、とかじゃなくて。

これら二つの会社のほかに、フィラデルフィアとその近郊にファイヤーマークが残っていると判明している消防会社は以下の通り。
The Insurance Company of North America、1794年設立。イーグルのデザインで、会社の建物はまだ16th Street とArch Streetの交差点にあるそうです。
The Fire Association of Philadelphia、縦型の楕円の枠に蛇のように見える消火ホースのデザイン
Germantown Mutual Fire Insurance Co. 二つの手が握手しているデザイン
United Firemen's Insurance Co. ポンプ(早期の消火トラック)のデザインで、UとFの字がつくことが多い。
最初の二つ以外のマークはそれほど多くないので、今回見ることはできるでしょうか。

独立宣言ホールのあるこのあたりを抜けて、南に向かいます。
Independencehall.jpg
こんなところもちょっと可愛いでしょ。
alley.jpg
おっ、あったよ。まずは「ハンド」!
hands1.jpg
まもなく「ツリー」も発見。
tree1.jpg
おっ… いや違う。これは何だか、歴史教会加盟建築的なマークですね。
historicsign.jpg
なるほどこういうフックがあって、そこにマークがつけられてるのだな。(多分)
hook.jpg
また「ツリー」発見。
tree2.jpg
発見すると嬉しいのだけれど、ずーっと上を見て歩いているので首がこります。
それから多分、怪しいです。
hands2.jpg

ここでトリビア。
レンガの壁は、よく見ると実際に構造上意義のあるくみ方か、ただ表にはってあるだけかがわかります。
brickwall.jpg
横長のレンガの合間に、短いものが混ざっているのはきちんとした構造物です。短く見えるのはレンガのお尻の面が見えているので、これは中外に積む二層を強化するため向きを変えておいてあるから。
…というのは、家を買うときに不動産屋さんから教えてもらった受け売りです。

さて、またいくつかいきますよ。
tree4.jpg
hands4.jpg

ここでフィラデルフィアの消防の歴史を少々。
18世紀当時フィラデルフィアは人口およそ1万5千人。
そもそも町をデザインしたウイリアム・ペンの念頭には、当時ロンドンで問題になっていた火事を防ぐことが目標としてあったため、ストリートは当時の平均的な幅よりも広く、建物は多くがレンガと石で作られました。
その甲斐あって、1666年のロンドンや1740年のチャールストンのような規模の大火事には見舞われなかったが、努力にも関わらずまだ火事はないわけではなかった。
1730年デラウェア川沿いで大火事が起こる。フランクリンははガゼット紙に、「その夕方風はなかった。良いエンジン(消火ポンプ)と消火道具があれば火事は広がらずに済んだだろう」と書いています。その後イギリスから消火器具が輸入され、皮のバケツ、フック、梯子、エンジンが町のあちこちに設置されたそうな。

さらなる対策として、フランクリンを筆頭とする有志が集まって設立されたのがThe Philadelphia Contributionship、「ザ・ハンド・イン・ハンド」だった。設立当初の契約システムは7年満期で、7年の終わりに掛かった費用を計算して差額が払い戻しされた。

パート1に「自社のマークのない家の消火はしない」という噂についてかきましたが、ファイヤーマークの目的は別のところにあったようです。すなわち、
保険会社の宣伝。
がっかり。

tree3.jpg
hands3.jpg

そろそろくたびれたので、また公園でも通って帰りましょう。
park.jpg

今回は残念ながら「ハンド」と「ツリー」以外のマークは見つかりませんでした。
もし皆さんがフィラデルフィアを訪れる機会があったら是非探してみて下さい。
首はこりますけれども。

おまけ。昔のフィラデルフィアの写真。
Chestnutfrom17th.jpg



文中に挙げた以外の参考ページは以下の通りです。
http://www.phillymag.com/realestate/architecture-design/the-storied-fire-marks-of-philadelphia/ 
http://www.ushistory.org/franklin/philadelphia/insurance.htm






ファイアー・マーク・ハンティング(パート1)

その昔うっかり、「フィラデルフィアの歴史」なんていうコースを履修した。

社会科の科目は昔から不得意で、だから歴史を何でもいいから1コース取れと言われたとき、狭い範囲のことなら易しかろうと思ってこれに決めたのだ。狭ければ深い、ということに気がついたのはもう両足突っ込んでからだった。あの先生のクラスは難しいから留学生は殆ど取らない、ともしばらくしてから聞かされたがあとの祭りである。

教科書はこれ。全842ページ。(←「これ」がリンクになってます。以下、この本が主な文献になります。)

これ、私の。
本みひらき
何しろ留学して2学期目である。自分の専門分野以外はノートをとるのもままならないというのに、普段使わない語彙の嵐。予習で教科書を読んで片端から鉛筆でメモを書き込んでのぞんだのでこんなことに。

学期の終わりに、フィールド・トリップがあった。アメリカ独立の頃の歴史が残る一角を歩いて、実際に建物を見よう、そして当時独立に関わった人たちが通った居酒屋(の、正確には再現版。オリジナルは火事で消失)でご飯を食べよう、という企画だった。授業に出てきた建物を通るたびに、日ごろからハイパーな教授が「君達このビルはなんと言う名前で、用途は何だ!」といつもの5割り増しの勢いで訊くのだが殆ど誰も何も覚えておらず、教授は「君達は一学期間何をしていたんだ」と肩を落としていた。

そんなフィールド・トリップで私の印象に残ったもののひとつが、ファイヤー・マークだった。

ファイヤー・マークと言うのは、家のドアの上辺りの壁につける火災保険会社の印である。講義では「保険を掛けていない家は消防署が来ても消火しないで帰っちゃった」みたいにならったのだが、今回このブログを書くに当たって調べたところ、それはフィラデルフィアに関してはどうも根拠のない話のようだ。(注参照)

このフィールド・トリップの後、フィラデルフィアの歴史地区がすっかり気に入った私は、しばしばそのあたりを散歩するようになった。そうしてその度に古い家のドアの上を見上げてはファイヤー・マークを探した。

…ころから、十数年が過ぎた。

しばらく遠ざかっていたのだが、この頃また仕事でその近所にいる機会が増えて、仕事が半日だったときに懐かしい場所をうろうろしてみたのでした。そんなわけで、その記録。

仕事をお昼に終えて、まあ当然最初に向かうのは腹ごしらえです。
フィールド・トリップのときに皆でご飯を食べた、ここ。
シティタバーン
citytavernsign.jpg

アメリカ独立の頃を模した建物、服装、そしてメニューで食事を提供するレストランです。私は一人だったので何とか入れてもらえたのですが、二人以上でふらりと立ち寄ったお客さんたちは予約で一杯だと断られていました。予約は入れたほうがいいようです。

で、これ。
citytavernales.jpg

私のテーブルにこれが運ばれてきたら、観光客と思しき近くのテーブルのお兄さんが - ワインも大分回っていたのであろう - ものすごく見てた。ので、「これ、お勧めですよ。」と笑顔で言ったら初めて自分が凝視していたのに気づいたという風で謝られました。 ここのエールはそれぞれ独立の頃にいわれのあるものだし結構美味しいので、もっと前面に出してもいいと思うのだが、ごちゃっとしたメニューの半ばについでみたいに書いてあるだけで勿体無い。お越しの際はお見逃しなきよう。

私のお勧めは、左端のジョージワシントン・ポーターと、右端のアレキサンダー・ハミルトンIPAです。もちろんそれぞれフルグラス単品の注文もできます。

ここではウサギなども食べられますが、今回はせっかくビールだしってことでこれで。
パンは当時のレシピだとかで、素朴で、まああの、正直ものすごく旨いというんでもありません。
citytavernfood.jpg
citytavernbread.jpg

空腹にビールが回ったので、店を出た頃にはすでにファイヤー・マークを探すというミッションにわき目も振らず突進、という風ではなくなっていた。早くも企画倒れか。

おや、こんな観光方法もあるんですね。
vehicle.jpg

先頭は案内の人で、観光客がついて行っている。の、ですが、観光客の顔が皆こわばっていた。慣れない乗り物の操作で手一杯だったのであろう。楽しめたんですかね。
フィラデルフィアの歴史地区は、それでも歩けば結構な広さがあるので、交通手段としては便利かもしれない。

そうして、表のポスターのタツノオトシゴのX線写真に惹かれてふらふらとここ(←リンク)に入る。

化学関係の学会のようなビルの片隅に化学博物館があるのだが、今まで全く存在にも気づかなかった。ポスターの展示はワシントンDCのスミソニアンの展示の一時的借り物だったわけですが、面白うございました。生き物って機械なんだな、と思った。いずれ本家を見に行こう。

魚の骨
fishbone.jpg

常設は古い化学実験器具などの展示で、これも面白かったです。
分子模型
分子模型
リトマス紙。懐かしい!
リトマス紙


…少しもファイヤーマークに近づいてゆかない。
写真の嵩がはったので、つづきはパート2で。


(注)
フィラデルフィアの自主消防署はファイヤーマークがある、つまり保険に入っている建物しか消化しなかった、などの噂があるが、多くの歴史家が疑いを表明している。こういったことはイギリスでは起こっていた証拠があるが、フィラデルフィアでは文書が見つかっていない。少なくともフィラデルフィアのひとつの保険会社は最初に到着した消防署に賞金を出す制度を設けていた。(参考リンク
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剣祐

Author:剣祐
剣の修行中。

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