ファイアー・マーク・ハンティング(パート1)

その昔うっかり、「フィラデルフィアの歴史」なんていうコースを履修した。

社会科の科目は昔から不得意で、だから歴史を何でもいいから1コース取れと言われたとき、狭い範囲のことなら易しかろうと思ってこれに決めたのだ。狭ければ深い、ということに気がついたのはもう両足突っ込んでからだった。あの先生のクラスは難しいから留学生は殆ど取らない、ともしばらくしてから聞かされたがあとの祭りである。

教科書はこれ。全842ページ。(←「これ」がリンクになってます。以下、この本が主な文献になります。)

これ、私の。
本みひらき
何しろ留学して2学期目である。自分の専門分野以外はノートをとるのもままならないというのに、普段使わない語彙の嵐。予習で教科書を読んで片端から鉛筆でメモを書き込んでのぞんだのでこんなことに。

学期の終わりに、フィールド・トリップがあった。アメリカ独立の頃の歴史が残る一角を歩いて、実際に建物を見よう、そして当時独立に関わった人たちが通った居酒屋(の、正確には再現版。オリジナルは火事で消失)でご飯を食べよう、という企画だった。授業に出てきた建物を通るたびに、日ごろからハイパーな教授が「君達このビルはなんと言う名前で、用途は何だ!」といつもの5割り増しの勢いで訊くのだが殆ど誰も何も覚えておらず、教授は「君達は一学期間何をしていたんだ」と肩を落としていた。

そんなフィールド・トリップで私の印象に残ったもののひとつが、ファイヤー・マークだった。

ファイヤー・マークと言うのは、家のドアの上辺りの壁につける火災保険会社の印である。講義では「保険を掛けていない家は消防署が来ても消火しないで帰っちゃった」みたいにならったのだが、今回このブログを書くに当たって調べたところ、それはフィラデルフィアに関してはどうも根拠のない話のようだ。(注参照)

このフィールド・トリップの後、フィラデルフィアの歴史地区がすっかり気に入った私は、しばしばそのあたりを散歩するようになった。そうしてその度に古い家のドアの上を見上げてはファイヤー・マークを探した。

…ころから、十数年が過ぎた。

しばらく遠ざかっていたのだが、この頃また仕事でその近所にいる機会が増えて、仕事が半日だったときに懐かしい場所をうろうろしてみたのでした。そんなわけで、その記録。

仕事をお昼に終えて、まあ当然最初に向かうのは腹ごしらえです。
フィールド・トリップのときに皆でご飯を食べた、ここ。
シティタバーン
citytavernsign.jpg

アメリカ独立の頃を模した建物、服装、そしてメニューで食事を提供するレストランです。私は一人だったので何とか入れてもらえたのですが、二人以上でふらりと立ち寄ったお客さんたちは予約で一杯だと断られていました。予約は入れたほうがいいようです。

で、これ。
citytavernales.jpg

私のテーブルにこれが運ばれてきたら、観光客と思しき近くのテーブルのお兄さんが - ワインも大分回っていたのであろう - ものすごく見てた。ので、「これ、お勧めですよ。」と笑顔で言ったら初めて自分が凝視していたのに気づいたという風で謝られました。 ここのエールはそれぞれ独立の頃にいわれのあるものだし結構美味しいので、もっと前面に出してもいいと思うのだが、ごちゃっとしたメニューの半ばについでみたいに書いてあるだけで勿体無い。お越しの際はお見逃しなきよう。

私のお勧めは、左端のジョージワシントン・ポーターと、右端のアレキサンダー・ハミルトンIPAです。もちろんそれぞれフルグラス単品の注文もできます。

ここではウサギなども食べられますが、今回はせっかくビールだしってことでこれで。
パンは当時のレシピだとかで、素朴で、まああの、正直ものすごく旨いというんでもありません。
citytavernfood.jpg
citytavernbread.jpg

空腹にビールが回ったので、店を出た頃にはすでにファイヤー・マークを探すというミッションにわき目も振らず突進、という風ではなくなっていた。早くも企画倒れか。

おや、こんな観光方法もあるんですね。
vehicle.jpg

先頭は案内の人で、観光客がついて行っている。の、ですが、観光客の顔が皆こわばっていた。慣れない乗り物の操作で手一杯だったのであろう。楽しめたんですかね。
フィラデルフィアの歴史地区は、それでも歩けば結構な広さがあるので、交通手段としては便利かもしれない。

そうして、表のポスターのタツノオトシゴのX線写真に惹かれてふらふらとここ(←リンク)に入る。

化学関係の学会のようなビルの片隅に化学博物館があるのだが、今まで全く存在にも気づかなかった。ポスターの展示はワシントンDCのスミソニアンの展示の一時的借り物だったわけですが、面白うございました。生き物って機械なんだな、と思った。いずれ本家を見に行こう。

魚の骨
fishbone.jpg

常設は古い化学実験器具などの展示で、これも面白かったです。
分子模型
分子模型
リトマス紙。懐かしい!
リトマス紙


…少しもファイヤーマークに近づいてゆかない。
写真の嵩がはったので、つづきはパート2で。


(注)
フィラデルフィアの自主消防署はファイヤーマークがある、つまり保険に入っている建物しか消化しなかった、などの噂があるが、多くの歴史家が疑いを表明している。こういったことはイギリスでは起こっていた証拠があるが、フィラデルフィアでは文書が見つかっていない。少なくともフィラデルフィアのひとつの保険会社は最初に到着した消防署に賞金を出す制度を設けていた。(参考リンク

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剣の修行中。

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